外の世界


知見

努力

カントによれば、努力して手に入れた習慣のみ善である。

勇気

ゲーテによれば、お金を失うことは小さな損失、名誉を失うことは大きな損失、勇気を失うことは全ての損失、である。

自由論

自由論についてはものの本を読むとして、我々の生活において自由が果たす大きな意味を二つ。

一つは、自由があることで競争原理が働き、モチベーションのもととなり、組織の硬直化やマンネリ、あるいは堕落を防ぐ手段になる。

もう一つは、幸福を求めるための手段として自由がある。
幸福の形は、人により異なるから、その人ごとの幸福を実現するために自由が必要となる。

ハインリッヒの法則

ハインリッヒの法則として知られるこの法則によると、「一件の大きな事故・災害の裏には、29件の軽微な事故・災害、そして300件のヒヤリ・ハット(事故には至らなかったもののヒヤリとした、ハッとした事例)がある」とされる。

また、「重大災害の防止のためには、事故や災害の発生が予測されたヒヤリ・ハットの段階で対処していくことが必要」という教訓が導き出される。

これは、労働災害や労働安全について教育を受ける際に必ず出てくる法則と教訓であるが、安全分野にとどまらず、社会現象や人の行動について考えるときにも、この法則が応用できる場合があり、対策の考察にも有効と思われる。

子供の目撃証言

子供の目撃証言は信ぴょう性に劣ることが知られているが、問題点として次の点があげられている。
◇ 事実でないことを付け足す。
◇ 詳細を省略する。

故意ではないが、他の人の話や他の人からのインプット、更に、自分の嗜好や感情の影響を受けやすい傾向があることと、重要性や社会性に対する認識が劣ることが原因と考える。

コミュニケーション

人類が総じて賢くなると、コミュニケーションに費やす時間が減るという。

逆にいえば、人はそれほど賢くないので、コミュニケーションは理想的にはいかないということだ。

東大寺 別当 森本公誠

彼らの、悩める人に寄り添う、という真理。
現実的でホッとする。


やさしい経済学

ベッカー 清家 篤

人的資本理論の経済学的な革命性は、賃金と生産能力のかい離が、ミクロ経済学と整合的に起こりうる....
制度派労働経済学に、ミクロ経済学は押しまくられていた。....
しかし人的資本理論に依拠すれば、....
ベッカーの人的理論の登場によって、ミクロ経済学は一気に湿地を回復し、....

ウェブレン 宇沢 弘文

しかし、やがて英国のアルフレッド・マーシャルの影響が強まり、いわゆる新古典派経済学が....
歴史学派の経済学は、一国の経済はその国特有の社会、文化、自然の諸条件によって規定される歴史的な現象であり、決してすべての国、時代に共通して適用される一般的、普遍的な経済理論は存在しないと考えた。これに対して新古典派経済学は、社会、文化、自然の諸条件を捨象する。純粋に経済的な動機に基づいて合理的に行動する、経済人(ホモ・エコノミクス)という....
今の状況に照らしてみれば、アメリカ的な生き方を世界的な次元で広めようとするグローバリゼーションの流れは新古典派的信条の具現化であるのに対して、いま欧州連合(EU)を中心として起こっている都市と自然のルネッサンスという大きな時代的潮流は、歴史学派的信条に現代的装いを与えたもの....

市場の期待と財政政策 斉藤 慎

単純なケインズ型のモデルで考えると、公共投資の経済波及効果は乗数とよばれ、一から限界消費性向(所得に占める消費の割合)を差しいたものの逆数である。一万円の所得増加により消費が五千円増加する場合には、限界消費性向は0.5で、乗数は2となる。....
公共投資の増加が経済規模の拡大につながるためのカギは、それ以外の需要が増加すると見るかどうかにある。最も単純なモデルでは公共投資拡大に伴い消費が増加し、先述の乗数効果を生み出す。....
このような伝統的な見方に大きな衝撃を与えたのが「合理的期待形成学派」である。....公共投資の増加に見合う税負担が将来....見合うだけの貯蓄を行うため、現在の消費を控えるからである。....
瞬間的には消費を増やせるが、人々が次第に消費を抑え、将来負担を考えて相当部分を貯蓄に回すと予想される....

税による現在の負担と国債の形での将来負担に差がないことを主張したのがリカードの「中立命題」である。....ここで、中立命題が完全に成立すると想定すると、現在納税している世代が生きている間に自らすべて負担することを前提に国債発行が行われていることになる。....

ある世代が生涯を通じて政府サービスなどから得られるであろう経済的受益と政府に支払う税などの負担との現在価値の差額、つまり純負担額を比較し、世代ごとの受益・負担格差を明らかにする。負担面のみを取り出すと明らかにリカードの中立命題と対応関係があることが理解されよう。....
現在の大幅な財政赤字を改善するためには、歳出削減か歳入拡大を通じた改革が現実的と言える。そうした改革は、実施しても若者を中心とした現役世代の受益を減らすか負担を増やす方向に働くことが多くの世代会計シュミレーションで示されている。
しかし、現状を放置すれば、彼らの純負担はさらに急膨張し、それを今から予想して....中長期的な大幅な負担増を避けるために、若者がより「小さな政府」を選択しようとすることは合理的である。
以上から得られる結論は、中長期的な視点をより重視した財政運営への転換が必要という点だ。

....不況による運用環境の悪化などがあることには要注意だが、高齢化の影響があることは疑いがない。....
政府が国民のために有効な支出をすると国民が予想している場合には、社会保障負担分と同額だけ個人の貯蓄を減らすことができる....。なぜなら、社会保障給付の形で将来個人に分配されるからである。....
政府への信頼が厚い場合は、国民負担率が高くても理解が得やすいと考えられる。

....ある世代の人々が子供の世代の経済状態を考慮して行動し、....これがバローの中立命題である。この命題が成立する場合には、拡張的な財政政策を行っても、やはりいずれ負担が増すと予想されるため、貯蓄が増え、景気を刺激することはない。....
これと対極をなすのが、....最も単純な形のケインズモデルである。....
財政赤字の膨張を見て人々が将来の負担増を予想し、それが実体経済に影響を与えている可能性がある。....

事業再生と金融 斉藤 誠

....不良債権問題の本質も、企業の債務圧縮(財務リストラ)をしないと、事業再生を図ることができない点にある。....
事業再生の成果は、まずは既得権益を持つ既存債権者に返済され、新規資金の供給者の手許に配分されない....。既存債権者が何らかの形で....債権を放棄すると、現在の事業価値と債務価値が見合う。....
債権を放棄する側からみても、事業の立て直しが遅れれば遅れるほど事業価値は劣化するので、事業損失を最小限に抑えるというメリットがある。
....融資先事業の劣化が始まれば、できるだけ早期にローンの損切りをするとともに、新規資金を投入することで事業立て直す方が、債権者の銀行にも、債務者の企業にも良いことになる。

利子の誕生 根岸 隆

....貨幣(カネ)的な利子が存在するのは、実はその背後にある経済社会の実体的な活動、つまり労働、土地、資本などの資源を用いて、いろいろな物が生産され、消費されていく際に、必然的に実物(モノ)的な利子(報酬)が発生するのを反映しているのである。....
社会経済の実物面においては、実物的な生産物が賃金として労働(者)に、地代として土地(所有者)に、そして資本利子(利潤)として資本(所有者)に分配される。

....スミスは、貨幣は財の交換を媒体するだけで、それ自体は実物経済に対して積極的に影響を与えないとする....貨幣的経済学ではなく実物的経済学として発展....

....漁船や漁網の持ち主が分け前として得る魚として例示した資本利子(資本財サービスの提供に伴う利潤)の....

....投資とは貯蓄の需要であり、投資と貯蓄、貯蓄の需要と貯蓄の供給とが等しくなければならないのである。....投資と貯蓄、貯蓄の需要と供給が等しくなるように、利子(資本利子)が決定される。....
利子が正でなければ貯蓄が供給されない。....

....貨幣に残された役割は何か。実物と貨幣の交換比率である物価水準の決定だけである。....

貨幣数量説のように総産出量を一定とするマクロ経済学は失格で、総産出量、総雇用量の短期的な変動の説明が可能な経済学が必要になった。「一般理論」(1936年)などを著したケインズの経済学である。....
総産出量は消費と投資の和である総需要に等しく決定される。総産出量と消費の差は貯蓄にほかならないから、この条件は貯蓄と投資が等しいことを意味する。....そこで、実物の世界では無視されていた貨幣の助けが必要になる。
すなわち、ケインズ経済学では、利子が高いと人々は利子のつかない現金を保有したがらないことを強調して、利子率は貨幣の需要によってきまると考える。
従って、少なくとも短期的には、貨幣が利子率を決めることを通じて投資などの実物経済を支配するのである。

....ケインズは人々が貨幣を好むこうした傾向を「流動性選好」とよび、この傾向が貨幣の需要を左右すると考えた。
つまり、利子とは流動的な資産である貨幣を手放すことに対する報酬である。
....デフレ期待が強まれば、投機的動機から貨幣の需要が増え、中央銀行がいくら貨幣の供給を増やしても、金利は下がらない。いわゆる流動性の罠(わな)に陥るのである。

貨幣と物価 清水 啓典

フリードマンはじめ多くの経済学者の....お金の量(貨幣量)の伸びが上昇(下降)すると、6-9ヵ月後に生産量や名目所得が増加(減少)する。....貨幣量の伸びの変化から12-18ヵ月で物価が上昇(下降)し始める。....
例えば1970年代の狂乱物価は、変動相場制への移行による円高不況を恐れた日本銀行が、貨幣供給量を過大に増やしたために生じた。また、1980年代のバブルの発生は、やはり円高防止を金融政策の目標として低金利政策を続け、貨幣量の増加を許したことによって発生した。1990年代のバブル崩壊は、バブル退治を狙って、貨幣量の伸びを急激に抑え込んでいった結果であった。....
貨幣数量説に従えば、貨幣量の伸びは財・サービスの取引量の伸びをなお上回ってはいるが、....頻度(流通速度)が大幅に下がっているため、物価が下落している状況にある。....
デフレの解消には、こうした流通速度の低下を補って余りある貨幣量の増加が必要だとの声が増えている。

....お金の量の変化が物価に影響を与えるまでに2年ほど時間のズレが....では、貨幣の量が物価に与える影響の大きさや時間のズレは何によって....
1970年代以降、マクロ経済学はこの面で大きく進歩した。国民一人一人の先行きの予想(期待とよぶ)と、それを左右する情報が決定的な役割を果たすことが分かって....
長期と短期の区別は、実は情報と期待がどれだけのスピードで国民の間に広がるかという点に関係している....
現代の情報社会では、情報の伝達が迅速かつ広範になったことで、貨幣と経済活動の関係も大きく変貌してきた。....

....それは生産量、取引、雇用の低下をもたらし、損失、倒産、失業を生む。弱気と自身の喪失が支配的となり、銀行は自衛のために貸し出しを控え、貨幣の量は一層減少する。....
フィッシャーの主張のポンイントは、過大な投資や投機が悪いのではなく、それが過大な負債を生みだした....過大な負債を生み出す最大の要因は金融緩和だと見る。....
「負債バブル」はその引き金となる投資機会が、非生産的な負債を生み出したときに、より大きく早く膨張しがちであるとも述べている。バブル期の土地投機はまさにこの実例である。....
大不況から回復するには、貨幣供給を増やし物価水準を負債契約が結ばれた時点の水準にまで引き上げた上で、その水準を維持する必要があると述べている。....

信用創造の仕組み 堀内 昭義

....銀行から信用(融資)を得た人々の手元には、銀行からのその負債に対応して銀行の預金という資産が届けられ、....
世の中に出回るお金の量を測る重要なマクロ経済指標にマネーサプライ(通貨供給量)と....重要視されているマネーサプライは「M2+CD」と呼ばれる集計量で、これは家計や企業が手元に持つ現金と、銀行の口座に保有している預金で構成される。....
経済の教科書によれば、不況期には支出活動、生活活動を刺激するために、中央銀行はマネーサプライを増やすべきである。しかしその核である預金は民間銀行の信用創造などで生まれるのだから、実際に通貨供給を増やすには、銀行に信用創造、つまり貸し出しを促す必要がある。

....では、貸出金額と同額の現金を用意する必要はあるのか。銀行家たちは古くから、ほんの少しの現金を用意しておけば十分であることを知っていた。....
ルネサンス期のイタリアの両替商人は、.....
銀行は預金のごく一部の現金を払い戻しに対応するお金としてもっていれば十分なのである。このお金を「準備」とよぶ。....一定額の現金を保有している銀行は、その現金を準備としてその何倍かの貸出金とそれに見合う預金を創出できる。....
このように、銀行部門が全体として保有する準備の何倍かの預金を、貸出を通じて創設できる過程は「信用乗数の原理」とよばれる。

....銀行が企業などに貸し出しを行う場合に一番重要な点は、貸したお金がちゃんと返されるかどうかを見極めることである。....
ルネッサンス期ごろには、....預金の形であたえておけば、モニタリングしやすくなる....
貸し出しという銀行の業務が、元利金の返済の確実さを高めるために借り手の経済状態をモニターする必要を伴っているとすれば、決済手段として幅広く用いられる預金を、貸出を行う裏返しとして作りだすことは、モニタリングの面でも有効であることが分かる。このモニタリング機能のある預金を扱わなければ、銀行にとってはリスクが高まるため、貸し出しにより慎重になるか、もっと高い金利でなければ貸さなくなるに違いない。
....銀行は貸し出しという信用創造と、預金という決算手段の供給に同時に携わることで、信用創造の機能を効率化しているのである。

「銀行業務はカネに関わることではなく情報に関わることだ」....金融の革新を喝破した言葉....
信用創造とは、金融仲介を円滑化させるために必要な情報の生産活動を指す....
例えば不良債権問題のために縮小すると、それは金融システムおける情報生産活動の減退を意味し、その結果、金融仲介の効率性を損ない、産業分野の生産にもマイナスの影響が及ぶ....
将来性のある企業が適正に評価されなければ、....信用創造の縮小の打撃は一時的にせよ大きいであろう。

....銀行は預金残高の一定比率(法定準備金)を日銀預け金として保有するよう義務づけられている。....
銀行が多額の日銀預け金を保有している場合には、それだけ積極的に貸し出しを増やし、その結果として預金残高を増やすことができる....
日銀は、優良な商業手形や国債を担保に民間銀行に短期の貸し出しをおこなえる。....資産の項目に日銀への預け金が計上される。....
民間銀行が持つ短期国債や長期国債を銀行が買い入れれば、民間銀行の....日銀預け金が増える。....
日銀が民間銀行から何らかの資産を購入すれば、それが株式であれ、あるいは土地であれ、結果的には民間銀行の持つ準備が増えて、信用創造につながるはずである。しかし、現在の日本では、....信用創造の拡大につながっていない。

....日銀による準備の調節と銀行の信用創造、あるいはマネーサプライの変化の関係は決して安定的ではない。....
一つの重要な要因は、人々が預金との比較でどれだけの現金を持つことを望むかという点である。....
低金利のときには、日銀の供給する準備が世紺の引き出しを通じて銀行から家計や企業へ移転しやすく、その分、銀行に残る準備は相対的に少なくなる。このため、銀行に一定の信用創造を促し、一定のマネーサプライの増加を達成するために必要となる追加的な準備の額は、人々の現金需要が少ない場合に比べると大きくなる。....
銀行に対する人々の信認の高さも現金需要を左右する。....融通額を減らし、手元に余分な準備を持つようになる。....
日銀の準備供給増加が円滑にマネーサプライの増加に結びつかなくなる。

....リスクの高い資産を多く持ちすぎている銀行は、民間企業向けの貸し出しを減らし、政府への資金供給、例えば国債の購入を増やすであろう。....
不要債権問題に直面している銀行部門に対し、画一的に信用リスクの拡大を抑制するように求め、銀行の経営を健全化させようとする政策は、一見すると銀行部門や金融システムの安定性を回復する意味で効果があるように見えるが、景気後退期に、さらに銀行融資を抑制するという結果を招きかねず、景気低迷を助長する側面を持つ。


巨匠に学ぶ

リカード 塩沢 由典

日本は長く、追い上げる立場にあった。商品を模倣し、相対的に安い賃金と高い生産性とで競争に勝利してきた。
後追いの時代には見えている先を追いかけるだけなので、量的な拡大が勝負だった。しかし、こういった日本のビジネスモデルはすでに崩れた。シュンペーター流にいえば、われわれは成功ゆえにこのモデルを崩壊させたのである。
....独創とか創造とか決断といったものを武器にしなければならない。しかし、このことを実現するためには、学校教育から人生哲学、われわれの価値観まで変えていかなければならない。
追い上げモデルが偉大な成功であっただけに、この切り替えには苦難を伴う。....減点主義から挑戦主義へと....指導者には、先例のない状況の中で、正しい判断が問われる。頭の回転の速い秀才ではなく、独創的で「頭の強い」秀才が要請されている。

マーシャル 佐和 隆光

経済学に課せられた重要な課題の一つは「社会的苦悩を克服すること」だ。そのためにマーシャルは、クールヘッドとウォームハートの持ち主を育てることに精魂を傾けた。
....第二次大戦後、1970年代後半に至るまで、わが国の経済学会はマルクス経済学者に支配されていた。....いわゆる近代経済学の中でも、市場を万能視する新古典派より、ケインズ派の方が圧倒的な人気を博していた。
....少数派であり続けた新古典派経済学の人気が急上昇したのは1970年代後半から、日本では80年代後半のバブル経済期に入ってからである。バブル経済期の経済学は「のぼせ上った頭脳とどん欲な心情」の持ち主に、お金もうけの手立てを教示する俗学に成り果てたかのようでさえあった。
....では、なぜ私が経済学を職業にしたのかというと、マーシャル流にいえば「社会的苦悩を克服する」ことへの貢献を願ったからである。
「個々人が私利私欲を追求するに任せておけば、社会全体の福利が最大限高まる」というアダム・スミスのテーゼにも、「所得格差が勤労意欲の源泉である」という新古典派の命題にも、とうてい肯(がえ)んじがたいものを私が感ずるのは、仏教美術史という「無用」の学の研究に没頭し、「私利私欲を極大化する」経済人とは似ても似つかぬ父を見て育ったからであろう。


名著

ヒューム 「人生論」解説 松井 彰彦 4.因果関係

原因と結果に関する推理はすべて経験の積み重ねから導かれるのであって、そこに論理的な必然性はないのである。

我々の知識が、「こうすればこうなる」といった因果関係に基礎を置いている以上、この議論は、全ての知識は疑い得る、という懐疑論をもたらす。
「明日も今日までと同様である」という予想ですら、「習慣から導かれたものにすぎない」のである。

人間の固定観念は経験によって身についたものだから、疑いは常に残る。
『神』を相対化し、社会にはびこる固定観念を否定したヒュームにとって、この懐疑は人々の独善と対決するうえで、必要なものだった。

人々の意見は経験に左右される。
本当との原因を知ることができない以上、我々は自分の信念を絶えず疑うことで、独善のまどろみからめざめなくてはならないのである。

自然科学であっても、ヒュームの懐疑からは逃れられない。
後にアインシュタインは言う、「何を我々が観察できるかを決めるのは理論なのだ」と。
理論という名の仮説があって初めて、我々は因果関係を推理できる。
アインシュタインは特殊相対性理論の陰にヒュームがあったと自ら認めている。

ヒューム 「人生論」解説 松井 彰彦 6.道徳と経済

ヒュームは、ここでも感性を第一義的なものとし、道徳は理性によって判断されるものではなく、感じられるものだと考えた。
そして、共感という感情こそが道徳の根底をなすものと考えたのである。

共感は道徳的に不可欠な条件である。
そして、道徳的社会が存在するためには、各人の共感の調和が必要である。

共感は、まず経験を通して感じられる。
『人類愛』という抽象的な観念の前にあるのは、身近な人にもたらされた幸不幸に共感する感情である。

身内や自分と同じ境遇にある人に対する共感は、見知らぬ人に対する共感よりも強くなる。

また、自国民に対する共感は他国民に対する共感よりも強くなる。

トクヴィル 「アメリカのデモクラシー」

旧体制(アンシャンレジューム)の階級規範が崩れ去り、資産は分割され均等化し、人々の間の社会的・政治的紐帯は希薄になった。
職業の選択は自由になり、立身出世の道はすべての人間に等しく開かれ、社会的流動性が高まった。

こうした個人主義の普及は人々の行動をどう変えていったのか。
人々は自分の合理的な判断力で処理し得ないような伝統的な義務や信仰箇条を拒絶して、自分と家族、そして友人からなる小さな私的世界に閉じこもり、より広い宇宙や社会全体の姿を見失うようになった。

その結果、公的な事柄への関心を失い、私的な経済福祉への関心を高め、現世的な安楽への欲求を強める。
封建領主・教会といった伝統的な「規制」がなくなった社会では、人々は自分たちの生活の向上につながるような、直接感じうる欲望をみたすことに熱中するのである。

物質的福祉を追求する機会がすべての人間に平等に与えられているから、競争は熾烈になり、多くの物財の生産と商業の発展が刺激される。

J.S.ミル 「自由論」

自由が重要なのは、それが社会進歩をもたらすもっとも重要な要素だからだ。
「唯一の確実な永続的な改革の源泉は自由である。なぜならば、自由によってこそ、およそ存在している限りの個人と同じ数の独立した改革の中心がありうるからである。」

サイモン 「経営行動」 - 限定された合理性

人間は、全てのことを知り得ないため、意思決定の能力は知りえることの範囲(認知限界)に制約される。
もし客観的で合理的な意思決定をしようとすれば、全ての与件を知り、選択から生ずる結果の全てを考察し、そこから唯一最善の選択を行う必要がある。
しかし現実には、知識の不完全性、予測の困難性、行動範囲の限界性があるため、完全に合理的な意思決定はあり得ない。

だが、ある限定された範囲内であれば、客観的な合理性を備えた判断も十分に可能であり、その範囲を限定する装置こそが組織であると考えた。
これが、理論の核となった組織における「限定合理性」の概念。


心理現象

リスク認知

リスクに対する理解のあり方は、年齢や性格など(性別、年齢、職業、知識量、性格、文化的背景、自然環境など)さまざまなフィルターを等して形成されるので、リスク認知は人によってさまざま。
自分の情報処理モデルに合致しない情報や都合の悪い情報は、無視されたり、つじつまが合うように変容されたりする。

認知的不協和

互いに相容れない情報や考えを同時に持つと、無意識に片方の考えを変えてバランスをとろうとする自然な心理現象。
無意識のうちに起こり、自分で気づくことは容易でない。

正常化の偏見

異常な事態に直面していながら、「大したことにはならないに違いない」「自分は大丈夫だろう」と思い込み、危険や脅威を軽視してしまうこと。
災害発生時に、避難や初動対応などの遅れの原因となる場合がある。

cf.「パニック神話」

社会的手抜き

集団で共同作業を行う時に一人当たりの課題遂行量が人数の増加に伴って低下する現象。
マクシミリアン・リンゲルマンの綱引き実験やラタネの大声実験が有名。

ピグマリン効果

プラスの期待をかけると、子供が期待通り望ましく成長するという現象。

7±2の法則

人が一度に処理できる情報キャパシティーは5から9個とされており、緊急時にはこのキャパシティーが普段にはない情報に奪われ、平常時ならすぐできるはずの判断や記憶の取り出しが困難になる。